産業医通信 2025年10月号

  • 2025年10月3日
  • 2025年11月5日

毎月朋愛会より旬の情報をお届けいたします

Contents

●骨粗しょう症の原因と予防
●治療と仕事の両立支援について
●子宮頸がんについて

骨粗しょう症の原因と予防

骨粗しょう症とは骨が脆くなる病気で、転ぶなどのわずかな衝撃が加わるだけで骨が折れてしまう危険をもたらす病気です。
日本には約1000万人以上の患者さんがいるといわれ、現在40歳以降の女性の4人に1人の罹患が推計されていますが、高齢化に伴いさらなる増加が見込まれています。
ヒトの骨は、古くなった骨を吸収する破骨細胞と、新たに骨をつくる骨芽細胞が適切に作用することで丈夫な構造が保たれています。ですが、そのバランスが崩れると骨が脆くなります。
この原因として、カルシウムの摂取不足、カルシウム吸収に必要なビタミンDの不足、運動不足のほか、加齢によるホルモンバランスの変化があります。
骨粗しょう症の予防に関しては、栄養バランスの良い食事と適切な運動が必要不可欠となります。まず骨の材料となるカルシウムを十分に摂取することです。(具体的には、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」による、成人1日当たりの推奨量600~700mgを摂取すること)
運動に関しては、1日30分程度の散歩など、骨の長軸方向に適度な刺激を与えるものが望ましいとされています。
また40歳以降の女性においては、ホルモンバランスの変化による骨折のリスクが増大することから、骨粗しょう症検診が推奨されています。

松 Dr.

治療と仕事の両立支援について

治療と仕事の両立支援は、疾病を抱える労働者が増加する中で、企業にとって重要な経営課題となっています。医療技術の進歩により就業可能性は高まっており、柔軟な支援体制を整えることは人材の定着や生産性向上につながります。
まず必要なのは、企業としての基本方針を明示し、社員へ周知することです。さらに、管理職や人事部門に対する研修を通じて意識を高め、相談窓口を整備することで、社員が安心して申出できる環境をつくることが重要です。労働者本人からの申し出が支援の出発点となります。
このとき、治療や病状に関する情報は個人的な内容であるため、直接会社に情報提供することに負担を感じる場合があります。その場合は面談を通して産業医が必要な情報を整理・加工し、会社に提供することが可能です。企業はこうした仕組みを活用できるよう整備しておくことが望まれます。
また、治療後の経過や障害の有無に応じて、作業転換や勤務時間の調整といった柔軟な対応を行うことが必要です。こうした取り組みは社員の健康確保を支えるだけでなく、企業の健康経営の推進にも直結します。
両立支援は単なる福利厚生ではなく、社員が安心して働き続けられる環境づくりであり、企業の持続的成長が促される投資なのです。

額田 Dr.

子宮頸がんについて

子宮頸がんは子宮の入口部分に発生するがんで、20~30代の若い女性でもかかる可能性がある疾患です。日本では子宮頸がんにかかる女性の約38%が20~30代とされています。
主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染です。HPVは性交渉で感染し、生涯で感染する割合は女性で約85%、男性で約91%と高率です。
子宮頸がんは初期には自覚症状がほとんどなく、進行すると不正出血や性行為時の出血などが現れます。無症状のまま進行することもあるため、定期的な検診が重要です。
予防には主に2つの方法があります。まず、HPVワクチン接種です。現在、2価・4価・9価の3種類のワクチンが使用可能で、9価ワクチンは子宮頸がんの80~90%を防ぎます。定期接種の対象は12~16歳の女子ですが、大人になってからでも接種することができます。
もう1つは子宮頸がん検診です。ワクチン接種していても20歳を過ぎたら定期的な検診が推奨されています。検診では子宮頸部の細胞を採取し、異常がないか調べます。
子宮頸がんは予防可能ながんです。ワクチン接種と定期検診を適切に行うことでリスクを大幅に減らせます。
先延ばしにせず、今できる予防行動を取りましょう。

本塚 Dr.

産業医通信2025-10
医療法人朋愛会 健診事業部 06-6232-0550 ホームページ